2025/05/10

Taiwan Today

文化・社会

霹靂の知的財産、各国に適した運用でハリウッドも注目

2017/06/09
霹靂国際多媒体は伝統的な人形劇である布袋戯を出発点に、様々な娯楽の消費分野に進出。芸術と文化面での業績とエンターテインメントとしての商業価値は、「霹靂(PILI)」を台湾の最もユニークな文化、そして映像エンタテインメントの代名詞にしており、今ではハリウッドからも合作を打診されるようになっている。(中央社)
台湾における文化クリエイティビティの業界において、IP(Intellectual Property=知的財産)の発展の手本とされる霹靂国際多媒体株式会社は、過去の海外進出失敗の経験から、世界で一定の位置を占めるには文化の違いを重視し、各国に適したやり方が必要であることを身をもって学んだ。このため今ではハリウッドの製作チームも合作を希望している。同社は伝統的な布袋戯(ボテヒ=台湾の人形劇)を出発点に、様々な娯楽の消費分野に進出。芸術と文化面での業績とエンターテインメントとしての商業価値は、「霹靂(PILI)」を台湾における地元文化の王者のみならず、台湾の最もユニークな文化、そして映像エンタテインメントの代名詞にもしたのである。
 
1988年の『霹靂金光』から28年。霹靂国際多媒体は2,000時間を超える布袋戯のテレビドラマを製作してきた。同社の郭宗霖財務長によれば、2002年には映画『聖石伝説』を日本、韓国などアジアで公開し、デジタル武侠動画のブームを巻き起こした。また、2006年には『霹靂英雄榜之争王記』が米国のアニメ専門チャンネル、カートゥーンネットワーク(Cartoon Network)で放送された。全米のテレビネットワークで台湾が製作したドラマが放送されるのは初めてだった。
 
しかし、『霹靂英雄榜之争王記』は米国のスタイルに合わせて編集しなおし、アフレコし、音楽も調整したことで支離滅裂になってしまったと言う。例えば音楽はヒップホップ調で東洋のテイストが失われた。また、著名なキャラクターである「葉小釵」は本来の口がきけない役柄からしゃべるキャラクターとなり、オリジナルの物語から外れてしまった。さらに放送時間が重なった日本のアニメ、『NARUTO-ナルト-』が強く、『霹靂英雄榜之争王記』は高い視聴率を上げられなかった。しかし霹靂国際多媒体は、この経験から文化の違いを強く意識するようになったのである。
 
その後、日本との合作テレビ人形劇ファンタジー、『Thunderbolt Fantasy東離劍遊記』のシーズン1が2016年7月に放送を始めると、台湾と日本で大人気となった他、アジアでも広く歓迎されたことでシーズン2の製作が決定。漫画、及びメディアを飛び越えた商品を製作、販売した他、小説版『Thunderbolt Fantasy東離劍遊記 外伝』も発売している。
 
『Thunderbolt Fantasy東離劍遊記』のキャラクターは、日本のアニメクリエイター、虚淵玄氏率いるチームが担当、同時にフィギュアメーカーのグッドスマイルカンパニーに人形部分の顧問を依頼した。さらに超豪華な声優陣を用意し、主題歌は人気アーティストの西川貴教さんが歌っている。『Thunderbolt Fantasy東離劍遊記』は日本でビジネスモデルを築くのに成功した。そして、霹靂国際多媒体にとって最大の収穫は、同社が文化の違いを理解し、各国に適したコンテンツが必要であることを学んだ点にあるという。
                           
霹靂国際多媒体は布袋戯から出発して知的財産の豊かな基礎を築いており、今ではその運用に積極的である。DVDやサウンドトラックの製作、発行の他、俳優による演劇や人形劇の劇場公演も行っている。さらには衛星テレビ局、映画事業、周辺グッズなどへとビジネスを広げているのである。
 
同社はまた、米国の衛星テレビ・ケーブルテレビ局であるHBOのドラマ『ゲーム・オブ・スローンズ』の布袋戯版の可能性を検討しており、すでにハリウッドから二つ以上の製作チームが台湾を訪れて合作に向けた話し合いを進めているという。
 
郭財務長は『Thunderbolt Fantasy東離劍遊記』が成功した原因を、位置づけの成功と、正しい合作パートナーを見つけられたことだと考えている。そして、霹靂国際多媒体が世界で足を固めるにはまず、知的財産を活用することが必要だと指摘する。今年は中国大陸の制作会社と、実写版連続ドラマの制作に乗り出す。見込まれる売り上げは少なくとも3億人民元(約48億日本円)で、霹靂の知的財産の価値をいっそう押し上げるものと期待されている。次に大切なのが、新たな知的財産を生み出していくこと。例えば『Thunderbolt Fantasy東離劍遊記』で、これは霹靂国際多媒体の核心となる製作能力を使って生み出した新たな知的財産なのである。
 
「合作は互いに助け合うこと。全ての知的財産にはプラットフォームが必要で、どのプラットフォームに乗せるかがポイントだ」と話す郭財務長は、霹靂国際多媒体が全ての知的財産を所有していることを強調する。日本でアニメを製作するには様々な著作権所有者の調整が必要で複雑なのに対して、霹靂は文字、美術、音楽、歌など全ての知的財産を所有しており、この点は外国でめったに見られない、霹靂の強みの一つなのである。
 
霹靂国際多媒体は今後も海外の市場に照準を合わせていく。日本は今年業務を拡大する市場で、霹靂は自らが所有する知的財産を徐々に日本に持ち込んでいくことにしている。
 
 

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